PC樹脂は、汎用エンジニアプラスチックの1つです。
汎用エンジニアリングプラスチックの中でも最高の耐衝撃性、ガラスにも匹敵する透明性、万が一燃えても延焼しない自己消火性など、優れた性質を持っています。
また、射出成形、押出成形、ブロー成形など、ほとんどの成形方法に対応しています。
耐久性、透明性、加工の自由度が求められる様々な分野で使用される、非常に多用途な材料です。
タフロン™、TARFLON NEO™とは、出光興産が連続式溶液法で製造しているポリカーボネート(PC)樹脂です。
「タフロン™」は、1969年に世界で初めて連続式溶液法により製造されました。その後、低温衝撃強度や屋外使用における耐候性をさらに高めたシロキサン共重合ポリカーボネート、「TARFLON NEO™」が開発されています。
特に「TARFLON NEO™」は、PC特有の弱点であるアルカリ性の薬品や有機溶剤への耐性も向上しており、従来のPCでは適用できなかった用途への使用が期待されます。
当サイトでは、出光興産が製造するPC「タフロン™」と「TARFLON NEO™」に関する情報や業界のお役立ち情報を発信していきます。
TARFLON NEO™に関する資料ダウンロード、お問い合わせは下記ボタンからご確認ください。
■ タフロン™(PC)の特徴と用途例
(1)耐衝撃性
プラスチックの中で抜群の耐衝撃性を有します。特に汎用エンジリアリングプラスチックの中では最高の耐衝撃性を誇り、防弾材料に使える高い衝撃強度です。
(2)透明性
タフロン™の透明グレードにおける可視光線透過率は、85~90%と非常に優れています。
光学的な用途に広く対応しており、屋外照明カバーやカーポートの屋根材などの屋外用途にもよく採用されます。
(3)寸法精度
成形収縮率が小さく、成形品の寸法安定性に優れているため、精密な成形が可能です。
(4)耐熱性
-40℃~+120℃の幅広い温度条件下で使用可能です。
例えば、家庭用冷凍庫、および冷蔵庫から電子レンジまで使用することができます。
(5)自己消火性
タフロン™の難燃剤無添加の一般グレードにおいて、UL94 V-2規格と同じ試験条件の難燃性を発揮します。
火がついても燃え広がらないため、建築材、電気電子機器など難燃性が必要とされる製品に採用されます。
(6)電気特性
絶縁破壊電圧などの特性に優れています
用途:CD光ディスク、ヘルメットやヘルメットシールド、カーポートやアーケード屋根材、自動車ヘッドランプレンズ・DRLデイライトレンズ、バイク風防、電気電子機器内外装 等。
■ TARFLON NEO™の特徴
PCの重合プロセスにて改質成分を重合させる「共重合技術」の開発を重ねた結果、完成したのがシロキサン共重合ポリカーボネート「TARFLON NEO™」です。
共重合させたシロキサンブロックがクラック進展を防ぎ、従来のPCでは適用できなかった様々な用途に展開することが可能になります。
従来のPCでは適用できなかった用途
- 表面塗装
- 屋外暴露環境での長期間の使用
- 消毒液などの薬剤が接触する環境での使用
TARFLON NEO™は、低温でも運動性が高く柔軟なシロキサン成分をポリカーボネート分子鎖に化学結合により組み込んでいます。
■ 従来のポリカーボネートとの違い
運動性が高く柔軟なシロキサンを共重合することにより、「ノッチ感度を低く」することができました。すなわち、多くの環境下で生じる「クラックに強い」材料に仕上がりました。その他、難燃性、耐薬品性、離型性に優れています。
TARFLON NEO™は、以下のような課題解決に寄与します。
■ 低温環境でも壊れにくい
用途例:冬季スポーツ用品、電池パック、スマートフォン、ヘルメット
軽量化を目的に製品は薄肉化されます。薄肉化による成形性低下を避けるため、低分子量の高流動タイプのPC樹脂が選定される場合がありますが、-40℃といった極低温の環境になると衝撃強度が低下します。
TARFLON NEO™は、運動性の高いシロキサンを共重合させることにより、一般ポリカーボネートに比べ極低温環境での衝撃強度を向上させた材料です。低温環境下(寒冷地、低温倉庫など)で使用される製品の軽量化、小型化に適した材料です。
■ 剛性と衝撃強度の向上
用途例:モバイル端末、パソコンのハウジング、バッテリーケース
PC樹脂は耐熱性、寸法精度、強度に優れており、ガラス繊維などを充填し、更に剛性を高めた材料がフレーム骨組みなどの構造部材などに使用されています。しかしながら、一般に、ガラス繊維などを充填した材料は、衝撃強度が低下します。
TARFLON NEO™は、PC樹脂の特性を維持しながら、衝撃吸収力が向上しているため、ガラス繊維などを充填した材料の衝撃特性向上に適しています。
■ 屋外使用における耐久性の向上
用途例:基地局、充電ステーション、スマートメーター、配電盤カバー
ポリカーボネート樹脂は、透明性や強度などの特性を活かし、屋外照明カバー、アーケードやカーポートの屋根材などの屋外用途にも採用されています。しかし、紫外線を浴びることで徐々に劣化していきます。一般的には紫外線吸収剤を添加することで、紫外線による樹脂の劣化進行を遅らせることができますが、添加した紫外線吸収剤が消費されてしまうと樹脂部の劣化が進行し、強度低下を起こします。
TARFLON NEO™は、紫外線に強いシロキサンを共重合していることと、シロキサンを共重合することで樹脂劣化によるクラックが進展しにくくなっていることから、屋外での耐久性向上が期待できます。
■ 屋外使用における耐久性の向上、耐薬品性の向上
用途例:家電製品、産業資材
強度や外観などの観点からPC樹脂を使用したいにもかかわらず、アルカリ性の薬品に接触する可能性があるため使用できないといったケースがあります。これは「カーボネート結合」がアルカリと接触すると分解が加速し、強度低下や外観低下を起こすためです。
シロキサンを共重合させたTARFLON NEO™では、シロキサンの効果により、耐アルカリ性の向上を確認しています。
■ 塗装品の強度低下を抑制
用途例:自動車内装、スマートフォン
樹脂製品は意匠性の向上を図るため、塗装が施される場合があります。塗装は、一般的に塗料を溶剤に溶かしたものを塗ったり、吹き付けたりする方法で行われます。PC樹脂は耐溶剤性が低い材料であり、塗装の際に樹脂表面が損傷を受ける場合があります。
シロキサンを共重合したTARFLON NEO™は、シロキサンがクラックの進展を抑制する効果があること、衝撃特性が一般PC樹脂と比べて向上していることから、塗装品の強度向上が期待できます。
TARFLON NEO™グレード一覧
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